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ありがとう を ありがとう

僕の生涯の、最後の家族になる筈だった、愛犬が家から抜け出して姿を消した。

警察にも保健所にも問い合わせたが、クルマなどによる事故に遭った犬の情報もなければ、僕自身が何十キロも走って確認した段階でも、そのような現場も見当たらなかった。

近所で姿が目撃されたという情報は得られたが、何者かが捕まえてクルマで立ち去って行ったようだという情報もあって混迷を極めた。

そのワンコは深刻な心臓病で、朝晩の投薬が必須だというのに、家を抜け出してから3日が経過してしまった。
つまりその間は薬を服用していない事になる。

自前でだが、それなりに見た目にも奇麗にカットしたばかりだったし、人懐こくておとなしい性格な為、もしかしたら、保護されたままその家の犬として飼われてしまう可能性は捨て切れない。
ならば、願わくば、適切な投薬を生涯に渡って行って欲しいとさえ願う。
最悪自身の元へ戻ってこなかった場合にだが、そこにこのワンコの、この先の、続きの明るい未来があるのならば…、と願うしかなかった。

勿論、僕の元へ戻ってきてくれる事が最善の大前提に、自分の出来うる範囲で散々に手を尽くしたつもりだったし、実際にそうした。

人が集まりそうなところに迷い犬の張り紙をお願いしたり、近隣の全戸は無理だと思い、通り沿いのお宅を訪ねて回ったが、有力な情報は殆どなく、とても不安な毎日を過ごし続ける事になった。
食事を作る気力など起きず、それでも何か胃に入れねばいけないと思い、身体に良くないと知りつつジャンクフードに手を伸ばしてしまう始末へと陥った。

たった数日だが、自身の体力が急速に落ちて行くのが判るくらい食生活は悪くなった。
愛犬がいなくなった日の前日に買い溜めしておいた安売りのパンが尽き始め、改めて振り返ってみてもどうかしてしまっているとしか言いようのない、食べるパンの数を半分に減らすという手段をとった。買い物に行く時間を捜索に充てたいと考えたからだが、我ながら間抜けだと思った。
目と鼻の先にあるコンビニで少しばかり高価なぱんやらおにぎりやらを買って動けば済む程度の事だというのに、それに全く気が付かなかった。
頭では分かっていても優先順位の上の方に自分自身の食事はリストアップされて来なかったという訳だ。

取り乱すというのは、こういう状態を指すのだ。
実に典型的なパターンを演じてしまった訳だ。

日々のふとした瞬間に思い描くのは、やはり愛犬の姿だ。
最期まで手元で、最後まで付き合うと決めたワンコたちとの人生で、最も情けなく、心を搔き毟られるような、生き別れを経験する羽目になるのかも知れないと考えるだけで後悔の念が頭の中を埋め尽くした。

切り札はない訳ではないが、所詮、他人任せでしかない。
懸賞金をかけて捜索を大々的に行う事だ。
しかし、そんな財力など自身にはない事は分かっていたし、馬鹿げた妄想だとそれは諦めるしかなかった。

残された道は善意のある方による保護と、それから保健所や警察への通報だ。


それからまた一日が過ぎ、家に帰って玄関のドアを開ける瞬間に精神的なダメージを更に喰らった。
まだ完全に決まった訳ではないし諦めた訳でもないが、たった半年で、家族というものの全てを失う瞬間に自分が遭遇していると痛感した。

地元で知り合い、この周辺エリアで最も信頼を置いているたった一人の友人は自信たっぷりな口調で励ましてくれた。
「大丈夫。絶対に大丈夫だから、まずは自分がメシ食べなよ。」
どうしてそんなにきっぱりと言い切れるんだと思うと、不思議と涙がこみ上げた。
この数日間の気持ちの痛みをその言葉が緩和してくれた。
そして、彼は言う。
「強く心で願う事!」

愛犬が無事に僕の所へ帰ってくるようにと、願って、願って、呼吸を止めて空を仰ぐ。そして、ゆっくりと息を吐く。
無事に帰ってきたら、思う存分に抱きしめてあげよう。
もう、どこへも行かないように、そっと言い聞かせながら頭を撫でてあげよう。
今は、強くそう思うしかないのだと、必死でワンコの無事を願った。

神がいるというのなら、そして対価として何かが必要だというのなら、僕の目でも腕でも持って行けばいいとさえ思うようになった。
犬バカ風情も度を超すとこうなるのだ。


最後に残った僕の家族が姿を消し、そして時間が経つにつれ妙な思考に苛まれるようになった。
どこかのお宅で保護され、そのままそのご家庭が家族の一員として僕の犬を別の名で迎え入れてくれるというのならば、そして、きちんと獣医師にかかり、適切な治療を受けられるのであれば、それももうひとつのワンコの運命であり、生涯でもあるのだろうというものだ。
我に返った途端に、何を腑抜けた事を…、と思いながら溜息をつくのだから始末に負えない。 
でも、探すのを諦める訳でもなく、あちこちへと訪ねまわるのだ。

人は矛盾する生き物だと教えられた事があるが、身に染みて腑に落ちたのは、今になって、この歳になって初めてだった。
人が歳を重ね、家族が減り、やがて独りになった時、それが大切な存在であればある程、心に隙間はできやすくなるのだろうし、その隙間の大きさは計測不能だ。
計り知れないのだ。

そう、心底思い知らされた。


しかし、どんな所で、一体どんな力が、全くどんな風に働くのかは分らないが、友人の「大丈夫」が真になった瞬間に、そんなどん底な気持ちが一変したのだ。
180度ひっくり返ったのだ。
手のひらを返したように、未確定の、でも、真実味に溢れた情報に踊らされるかの如く、気持は晴れ上がる。
実に都合良く…、だ。

僕の犬が見つかったらしいとの情報が入ったのだ。

それは保健所からの連絡だった。
僕の愛犬らしき犬の保護をされた方から連絡があったので、そちらへ直接電話をしてくれというものだった。
保護をされた方へ連絡をし、愛犬の詳細な特徴と保護された犬の特徴との擦り合わせを行った。
間違いないと確信が持てる内容だった。
それから自分の愛犬思しき犬を迎えに急ぎ、そして、それはそのまま再会となった。

やつれたというか、クタクタになったというか、泥埃で汚れてはいたものの、見覚えのある犬がそこにいた。
名を呼ぶと反応して、ヨロリと立ち上がった。
保護をして頂いていた方は良かったと喜んで下さった。

保護をして下さった方は動物愛護に対して深い理解があった。
通常、動物を保護した場合には保健所へ連絡をする。次の手順として、保健所がその当該動物を回収に来る。保健所が保護した動物の所有者が引取りに来るのを待つという形式になっている。

今回、僕の犬を保護して下さった方は、保健所に連絡はしたものの引き渡しを拒んだとの事だった。
詳細は記述できないが、理由は保健所に行った事がある人ならば、そして事情に精通している方ならば、十分に理解できる内容だ。
お陰で、僕の犬は最短で、健康状態の増悪に晒される事もなく、僕の元へと戻ったのだった。

愛犬を連れて帰った僕は、毛に付いてしまった植物の種やゴミや糞などをバリカンを使って手早く刈り落し、シャンプーで埃汚れを洗い流し、かかりつけの動物病院へと向かった。

室内犬が迷い犬として彷徨った際には、その犬はいくつものリスクを伴う事になる。
未知のものに対する興味や刺激で、思いがけないものを口にしてしまったり、無意識のうちに触ってはいけないものに触れてしまったり、付かれては困るものに取りつかれたり、刺されたりしてしまっているケースが往々にしてあるのだ。

僕の愛犬に対する懸念事項もそれだった。

かかりつけの獣医師も同意見で、最初に行ったのが血液検査だった。
結果が出るまでにひと通りのエコー検査や、植物の棘等による怪我の治療、取りきれていなかったゴミの除去をしてもらった。
マダニ、ノミ、フィラリア、農薬、忌避薬、殺鼠剤などの影響の有無を確かめ、問題を端から潰していった。

今は治療薬の開発が著しく、同時に複数の症状に対処できるものが製造されている。
今回の診断で、僕の犬は大事をとり、抗生剤の注射と、ノミやフィラリアなどに同時に作用する上述の塗り薬と、血液検査からの判断で、肝臓保護薬の飲み薬で対処する事になったのだが、血液検査の結果が出るまで暫くかかる時間の間にもらった電話で、僕は更に心に染みる思いを経験した。
それは僕の犬が見つかった事に、電話の向こうで泣いて喜んでくれる知人男性の涙声だ。
つられて自分も涙が滲んでしまった。
自身でも犬と家族として暮らす電話の向こうの彼は、僕の犬の無事に惜しみなく涙を流してくれたのだ。

温かく、優しく、ありがたく…。


ワンコ達からもらえるものが、こんなところにもあったのだ。


何よりも嬉しい宝物を、一般的にペットと称される家族たちの繋がりから我々は貰っている。

たくさん貰っている。
それこそ計り知れない大きさのものを知らずしらずのうちにさまざまなカタチでだ。


ありがたい。

と、一言で言い表すには、もったいない。

そんな気がするのは僕だけかも知れないけれど。


仕方がないから、やはり…。



「ありがとう」

なのだ。




後日談というか、愛犬と共に自宅へ戻った数時間後の新聞の折り込みに、迷い犬の捜索願いのチラシが挟まれて配達されたのだ。
前日に新聞店へ折り込みチラシのお願いをしに行った訳なのだが、そこのオーナーが愛犬家で、親身になって格安で折り込みをして下さったのだ。
愛犬が見つかったからといって、恐らく折り込みが終わっているであろう時間に依頼の取り下げをするのも如何なものかと思い、そのチラシが配達された翌日に、捜索していた犬が無事に見つかった旨を記述したチラシを折り込んでもらいに御礼を兼ねて新聞店へ行った。頂いたご好意にケチをつけたくなかったので、事実は少し捻じ曲げられて伝わる事となった。



「お陰さまで、チラシが入った日に情報が入りまして、無事に見つかりました。」








愛犬の放浪日数=5.5日
愛犬の放浪距離=最短計測で約5km
その間の天候=雨天1日、最低気温12℃の日が1日

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  • このエントリーのカテゴリ : わんこ

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